主体的学び研究所

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街づくりから人づくりへ

サステナブル•コミュニティ研究所(NPO法人)は地域創生は街づくりではなく「人づくり」であると考えて持続可能な社会のありかたを学び実践している団体である。人づくりは異文化の交流を通じて、より促進されるということがある。北海道苫小牧にあるむかわ町は、ししゃもの産地として有名であるが、やはり若者が少なくなっていて人づくりを通じたサステナブル社会の実現が期待されている。

先日、北海学園の菅原先生に「アカデミック•コーチング」の勉強会をむかわ町のむかわ高校で開催できないかご相談したところ快諾を頂いた。アカデミック•コーチングも社会の人づくりに貢献できれば又すばらしいことだと思う。

 

研究員 花岡隆一

大学の危機感について

この程文科省が「設置計画履行状況等調査」で大学や短大が申請したことに沿って適切に行われているかの調査内容を指摘、公表した。対象となったのは502校である。是正•改善指摘の内容は様々であり、授業内容が大学のレベルに到達していないというものもある。

研究所でこの問題を話し合った。「設置計画状況等調査」「認証評価」という大学の質保証をする仕組みは、一定の規定で大学の設置を認可するという「制度主義」であること。これが米などの文化的背景と違う。認可を受けた大学は、「最低基準を満たしたもの」という理解をいつの間にか忘れてしまっているのではないか。自ら立てた目標へ向かってより良い学習環境を提供していくということが大学運営という日常性の中で時にして置き去りになる。

ある意味で制度主義の欠点であり、大学の危機感がないと指摘するだけでは解決しない問題ではないだろうか。初等中等教育、教育に関する社会的背景など偏在する課題と一緒に考える必要も勿論ある。

 

研究員 花岡隆一

Why Don’t Students Like School ?

NYTに面白い記事があったので紹介します。

90%の教師が最近の生徒は注意力がなくなっていると言うが本当にそうなのかを考察した。集中できないのはスマホ(デジタル)が理由と思われるが違うと考える。デジタル世界は楽しみが無限にあるので頭が未来に向かってどこまでも素早く展開していくのであり、決して飽きっぽくなっているのではない。

むしろ懸念することは果てしないデジタル追究の結果、もうひとつの価値あることが見失われていくこと。人には外に発展する思考と内に向く思考(省察)がある。この省察という夢想する能力はとても重要であり、デジタル追究が過ぎると内に向く思考の時間が不足してバランスが崩れてしまう。そのためデジタル思考には一定の歯止めも必要である。

ダニエル•ウィリングハム氏(バージニア大学 心理学)より

 

研究員 花岡隆一

矢島里佳さんに会って <schoo WEB-campus(スクー)>

”0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げた矢島里佳さんは笑顔がすばらしい方です。日本の伝統文化を守る職人と子どもたちをつなげたいという気持ちで、この事業を立ち上げました。彼女は2013年ダボス会議のヤング•グローバル•シェイパーズに選出され、全国の講演会、テレビ、書籍等など目覚ましい活躍をしています。昨年目黒にaeru直営店をオープン。

そのお店で矢島さんに会って話しを伺いました。本業のaeruの商品づくりの他に、子どもの教育にも熱心に取組んでいます。お店でプロの音楽家による演奏会を開いて子どもたちに感じてもらう活動やスクーというwebキャンパスも実践しています。

主体的学び研究所の活動に興味を持ってもらいました。
子どもたちに本物に触れてもらうという教育はとても大事であると思います。

(和えるWEB: http://a-eru.co.jp)

研究員 花岡隆一

オンライン教育をなぜやるのか?

東京大学の船守美穂先生は地球物理学をやっていただけに現場に行きご自分で確かめるという方法を原則としています。文化人類学者の山口昌男氏を思い起こします。昨年、米国ダラスのPOD会議に出席されたご報告の中でオンライン教育がものすごい勢いで増えていることを知りました。勿論米国のオンライン教育隆盛の背景にはさまざまな理由があります。「オンライン教育をなぜやるのか?」を実際にやっている先生方に聞くと、特徴的な回答がありました。これがちょっとした驚きです。

「IT時代に育った学生は対面授業であると集中力に欠ける。ITやネット空間を通じた教育には自然と頭がついていくのだ」という答えです。成程と思うと同時に恐ろしさも感じました。

船守先生はオンライン教育では先端的な取り組みをしているアリゾナ州立大学も訪問して詳しい調査をされています。これはまたご紹介したいと思います。

 

研究員 花岡隆一

「大学国際化の虚実」中央公論2月号特集

主体的学び研究所フェローの倉部史記氏が中央公論2月号に投稿しているので早速拝読する。吉田文先生の隣という紙面で驚く。『急増する国際系学部を「看板倒れ」にするな』というタイトルで、高校生に寄り沿う立場を離れない倉部さんのいつもの視点が見える。社会の変化に沿って大学に求めるものが変わっていくのはある程度は理解できるが、大学が自己本位になることで高校生にミスマッチを与えていくことは決して許されないというのが主張である。(相変わらず8万人もの中退者が出ている)

中央公論の教育特集はその他にも、山際壽一京大総長、田村哲夫渋谷教育学園渋谷中学高校校長、柳沢幸雄開成中学•高校校長、岩渕秀樹文科省基礎研究推進室長、清水真木明大教授が記述していて基本的には現在置かれている立場からの提言がまとめられている。

その中で清水先生が『もし日本のすべての大学の授業が英語で行われたら』が面白い。日本と米国の大学運営の違いを明確に言っている。
「日本の大学は、みずからを「勉強したい者が主体的に勉強する場所」と規定し、監視されなくても勉強する少数の学生を対象とする高度な支援に教育資源を集中させてきた。」一方米国では「補助的な教育業務を担う豊富な人的資源と、この人的資源を確保するための人件費により、学生に無理やり勉強させる環境を作り上げてきた。」

主体的な学びを初等中等教育から実践できている者はどこの国でも数少ないのであるが米国ではそれを前提として「無理やり勉強させる環境を作り上げてきた」のである。このテーマについても今後考えていきたい。船守先生から頂いた問題提起である「米国の公立学校の危機(NCLB政策)」に関することである。

 

研究員 花岡隆一

オンライン教育3.0とは?

ニューヨーク工科大学のCTLにおけるコースデザインの第一人者であるZhadko博士を囲んで「オンライン教育3.0」=協同学習を実践目的としたオンライン教育である、ということを学んだ。
(東京大学 船守美穂先生の企画による)

米国では協同学習を促進するオンライン教育の実践が想像以上に進んでいる。オンライン教育は協同学習が可能であるがゆえに、対面教育より効率的で効果的な教育手段であると考えられ、協同学習を含まないオンライン教育は行う意味がないと言われるほどである。米国の大学では、背景にMOOCの出現および緊縮した高等教育財政などがある。オンライン教育における協同学習の方法や評価などについて多様な取り組みがされている。、テクノロジーの活用や支援体制についても興味深い取り組みが行われている。

オンライン教育3.0は、ブレンド型教育であり、かつSNSを使った教室内外授業である。学びに必要なものは省察の時間があること。省察とピア学習が繰り返して行われるなかで学びの向上があるもの。

協同学習が成立するために米国では様々な教育ツール(チップス)が開発されている。学生の学習文化を形成するモジュールでもある。Zhadko博士は7つの実践的テクノロジーを紹介する。Google Apps,Zoomなど汎用的なソフトからPrezi,Evernote,vtなどまで。

ブレンド型学習を有効にするための戦略も検討されている。ひとつの有効な方法として、3週間位を期間として家庭学習と対面学習での学びのヒントをその都度教師が与えることで学生が自分の学びの段階に応じて深い学びに繋げていく方策をあげる。(ひとつの協同学習でもある)

Dr. Olena Zhadko, Mgr. Course Development Center for Teaching and Learning, NYI T

研究員 花岡隆一

アクティブ•ラーニング教室のデザインが学びにどう影響を与えるか

クィーンズ大学(カナダ)は3つの実証的なアクティブ•ラーニング教室を設計した。48人のITを殆ど使わない協調学習教室、70人の双方向学習教室は各グループにLED端末と教室の壁にはマルチのスクリーンが配置され学生はBYODを使い教師や学生同士が端末を自在に活用したもの、136人のTBL教室はさらに強力なITが整備され教師卓から多様なアクティブ•ラーニングが実践できるというもの。

クィーンズ大学ではこの3つの教室を教師と学生との話し合いで使い分けしている。1年間使った成果と課題を学生と教師がそれぞれ整理した。学びの方法による学習評価については多くの実証データがあるが、「学習環境の変化が学びの方法や学びの成果にどう影響を与えるか」という実証はまだ少ない。

教師も学生も、学ぶ環境の変化が学びのモチベーションをあげることを様々な視点で実証できた。学生が主体的に学ぶことを促すことが実証された。48人、70人、136人という規模に応じてデザイン性は用意周到になされる必要があると、設計と運用責任者であるAndyは話します。この1年でいろいろなコースでの実証をしてきたが、今後はさらに多くのコースでの活用による課題を考えたいと。

クィーンズ大学への視察を考えたいと思う。

研究員 花岡隆一

協調学習がないオンライン学習は学習ではない!

本日は主体的学び研究所にニューヨーク工科大学のCTLでコースデザインの指導をしているOlena Zhandko先生をお招きしてセミナーを開催しました。これは東京大学の船守美穂先生の企画によるものです。。日本の高等教育においても興味深いテーマですので簡単にご紹介します。

米国では教育コストの急増により効率化ということが真剣に考えられていますが、MOOC第3世代はMOOC Movementをキャンパス内で活用することでコストの効率化を図っている、という報告は船守先生の調査にあります。つまりオンライン学習が従来とは違う形で注目されています。厳密に言うとブレンド型学習なのですが、オンライン学習の未来型は協調学習が伴うものであるということです。

このオンライン学習における協調学習の有り様についてニューヨーク工科大学での実践を含めた米国の紹介ですが、一方通行になりがちなオンライン学習を主体的学び、深い学びさらにはアダプティブな学びに繋げていくかはマスタリー•ラーニングに近いものがあります。つまり、きめこまかな教師のフォローアップが必要になります。ちょっとした質問(課題)を与えて考える時間をつくる。オープンソフトを活用して学生同士、学生と教師が教師外でコミュニケーションする場(バーチャル空間)を活発にするという流れです。
特にピアー学習の仕組みを張り巡らせることが大切である。一方で学生も教師も時間の制約があるのでどこまで教室外での協調学習を実践するかはよく考える必要があります。

セミナーの詳しい内容は研究所ホームページにアップされると思いますのでご覧ください。

研究員 花岡隆一

”ICEモデル”のこころについて

ICEモデルの開発者の一人であるSue先生(クィーンズ大学、カナダ)の話をよく聴くと何を大切にしているかがまた見えてきた。

アセスメントが学びを促進する。アセスメントと学びは密接な関係がある。すなわち、アセスメントモデルが学生の学びを作るので、もしアセスメントの目標、方法、選択を間違えると学びも間違える可能性が大きいということが原点にある。Bloomの方法という評価された考え方があるが限界もある。それは学びとは直線的に高いレベルに行くものではなく、繰り返していくものであるから。「学習のレベルの違いを学ぶのではなく、質的変容を経験していくものである」ことに気がつく。

Ideas,Connections,Extensionsというのは、知識をつなげて応用するという一連の繋がりであり、学びのプロセスとしてはより複雑な思考を行うことであるが、これは一方向ではなく回転していくものでもある。学習の段階に応じてICEのどれが大切かが決まる。Eで終わるのでなく、またIに、Cに成長していくのである。(ここがとても大切なポイント)

Sue先生の秀逸さはICEの質的アセスメントに「動詞」を使うことに思い至ったことであるが、考えれば学びとは静的なものではなくダイナミックなものであるから「動詞」という仕掛けを考えたのは理屈にもあっている。この「動詞」について考えるとさらに面白いことが分る。つながり(C)に行きやすい動詞と留まっている動詞があるということがゲーリー先生の分析で分った。私たちもまだ見つかっていない動詞を是非発見したいと思う。

研究員 花岡隆一