主体的学び研究所

05月

あらためて、主体的学びとはなにか

先週開催の教育ITソリューションEXPO(5/20~5/21)にて、当研究所もメディアサイト(株)と共同出展させていただきました。
広大な会場の混み合った出展ブースのなかで、当研究所にお越しいただきまして、本当にありがとうございました。
未来の教育、ICTで教育を活発にするためにはどうしたらよいか、自校での学習改善など、幅広いトピックを多くの方と、自由でワクワクするお話しと貴重なお時間をいただきました。
また、主体的学びについてのご助言や課題共有が出来ましたこと、心より感謝申し上げます。

あらためて、「主体的学びとは何か」を考える場のニーズを再確認させていただきました。
皆様のご意見、情報交換など、気軽に話したり、議論できる“場”をさらにご提供いたしたく存じます。
近々具体のご案内をいたしますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

研究員 大村昌代

「ハイブリッド留学」モデルをつくった工学院大学

「ハイブリッド留学」は工学院大学の商標である。このすごい留学制度を考案した青木俊志先生にお会いする。熱血漢である。語りが熱い。いくつもの独創がある。

2’ndランゲージって何ですか? 工学院大学では英語ではありません。専門学部の言葉です。建築学科は建築の専門用語、あるいは基礎数学ーーーが2’ndランゲージです。何故留学するか? 感動を求めて、それも深い感動を求めて海を渡るのです。3か月、全て自己責任でやってきた学生の変革は言葉では説明できません。

秀逸なことは深い感動を得られる場所を用意周到に選択していることである。カンタベリー(英)とシアトル(米)。この答えは想像してみてください。挑戦するだけでなく留学生の安全あんしんの仕組みが完璧なことである。

 

研究員 花岡隆一

主体的学び(アクティブラーニング)全国ネットワーク

中西徹先生(就実大学)は主体的学びを促す反転授業の実施に熱心に取組まれている。「発想学」というカリキュラムを作り、自由な発想でモノづくりに取り組む授業でも新たな発見がありました。アクティブラーニングはカリキュラムの転換が必須であり、最近米国のPODネットワークでイノベーション賞を授与したMichael Palmer先生(バージニア大学)は、アクティブラーニングを促すシラバスの作成について論述している。評価方法についても様々な取り組みがされているがまだ納得できるものは生まれていない。そもそも大学4年間の学びの評価は社会に出てからでないと出来ないという考え方もある。(教育学的な議論ではないが)

中西先生は全国の大学が今取組んでいるアクティブラーニングについて交流できる場を作りたいと考えています。主体的学び研究所としても一緒に仲間づくりをしていきたいと考えています。

研究員
花岡隆一

「偉大な教師はインスパイアする」※

東京インターハイスクール[東京都渋谷区](http://www.inter-highschool.ne.jp/)では、卒業式と入学式を同時に行う、とてもユニークなセレモニーを開催している。「同時開催? なぜ? どんなことをするのだろう。」多くの方がそう思うのではないだろうか。

時期的には、新たな進路に踏み出してしばらくしてからの式となる。自分の学びたいこと、追究したいことを前提にカリキュラムを作り、将来像を描きながら勉強し、プロジェクトをやり遂げて卒業を迎える。修業年限はない。その過程が自分のしたいことだから楽なのかというと、そうではなかったと多くの卒業生が振り返っていた。

では、やる気、継続力、原動力はどこにあるか。「ただ単に教科を勉強するのではなく、自分にとってなぜその教科を勉強するのか。意味ある学びができるからこの学校に入った。」「やろうと決めた。たいへんとも思ったが、やってみるとできた。」「いままでの自分を振り返り、好きなことだけするということでなく、「自分に責任を持てるか」と自問することで達成できた。」卒業生のことばは、主体的な学びとはなにかについて、大いに示唆するものだ。

「偉大な教師とは、、、」と引用した講話をたびたび拝聴したが、(私の経験上で)今回ほどピッタリだと思ったのは、この入卒式の生徒さんたちが初めてだった。壁を乗り越えて進路を切り開いた卒業生を見つめる入学生と入学したての後輩を見守る卒業生(と在校生)は、お互いをインスパイアする素晴らしい人たちだった。

※William Arthur Wardの格言
The mediocre teacher tells.
The good teacher explains.
The superior teacher demonstrates.
The great teacher inspires.

研究員 大村昌代

ICEモデルとアクティブラーニング

Queens 大学(カナダ)で開発されたICEモデル(Ideas-Connections-Extensions)はポータブルであることから使い易いため、アクティブラーニングを促進する考え方として大学や高校の現場でじわりと広がってきている。

開発者の一人であるSue Fostaty先生は知識の評価では人の成長を促すことができないと考え、ブルームとは違う方法、即ち学習者自らが省察を通じてPDCAを回しつつスパイラルに成長していくことを評価できるものとしてICEモデルを考えた。

ICEに取組んでいる方々から出る質問として、ICEはIから始めるのですか? これはどこから始めてもよい。Eから問題への意識づけを行い、Iに戻るということもある。又IにもC的Iというものがあり、Iそのものが既にConnectionを暗示している知識もあるという。ICEを授業で使う場合は教師がどこを強調しようとしている明確な意志が必要となる。

広島県立安芸高校は日本での先行実施例を豊富に持っている。私たちも安芸高校の取り組みから多くを学ぶことができる。よいアウトカムが生まれることを期待している。

研究員
花岡隆一

中国のアクティブラーニングについて

「文革後中国基礎教育における「主体性」の育成」(著者 李霞)が東信堂から出版された。これまでも中国の高等教育のアクティブラーニングの取り組みは気になっていたので、李霞先生の中国教育社会での「主体性」の意味づけと2001年からの「素質教育」、さらには米国的アクティブラーニングの取り込みとその位置付けについて大凡のことが知ることができた。

中国師範学校を卒業して教育委員会で現場を経験している友人は、しかしこの実態は違うという。そもそも中国は孔子の時代より主体的に学ぶということは実践してきている。「素質教育」は確かに戦後の階級闘争奉仕の仕組みの変革を目指したが、現場は米国や日本で推進されているアクティブラーニングは出来ていない。

アクティブラーニング学習支援システムを上海と北京の大学ベンチャーと共同で開発した。これを中国の高等教育機関へ紹介しようと考えたが、協同学習、PBLなどのアクティブラーニングの授業設計が中国では取り組みが少し遅れていることが判った。しかし、中国のスピードは早いので、近々ICTを使った主体的な学びの創造的なモデルがでてくるに違いないと思う。

 

研究員

花岡隆一

広島安芸高校のアクティブラーニングとICEモデルの取り組み

広島県教育委員会(下崎邦明教育長)がアクティブラーニングを促す授業方法としてICEモデルを高く評価している。主体的な学びを促す授業設計にICEモデルはポータブルに取組めることが使いやすいという考えを聞かせて頂いた。

この程ICEモデルを全校の基準として実施している広島県立安芸高校を訪問してその取り組みの深さに驚愕した。リーダーは柞磨(たるま)昭孝校長である。同校はアクティブラーニングを実施する準備としての「アクティブプラン」を作成している。授業設計の基本形としてあらゆる学科にどういう形態の授業がアクティブラーニングに最適かも実証しつつ創造している。大学でもまだ出来ていない取り組みである。

アクティブラーニングはグループ学習ではありません。一斉授業の形式でもアクティブラーングはできます。アクティブラーニングに大切なことは次の3つです。

1 自分自身で問いを立てられるようになること

2 自己内対話を主体的に行うようになること

3 学びを振り返り、学びを内面化できるようになること

そして柞磨校長は言います。「アクティブラーニングを行うにあたって、最初は勇気の問題です。」

 

研究員

花岡隆一

デジタルネイティブ学生時代の授業設計

今年(2015年)の大学入学生は、2008年の小学校6年生である。2008年はFacebookやTwitterの日本語化、iPhone3Gの発売、YouTubeとDocomoの提携などまさにスマートデバイス時代のスタートである。昨年、船守美穂先生(東大)がオンライン教育が進んでいるアリゾナ州立大学を訪問して、教師に聞いたところ、最近の学生はデジタルネイティブなのでICTを使うと学びが促進されるという。

この程、横浜商科大学の遠山先生、田尻先生が、嘉悦大学で取組んだICTリテラシー教育の再生という論文を頂いた。真正面からこういう取り組みを実践している高等教育はまだ少ない。

BYOD、クラウドを活用したアクティブ•ラーニングは最近多くの大学で取り組みが始まっているが、問題はこうした環境を学生主体で学習に取り込まれていないことである。両先生は早くからGoogle AppsやTwitterを取り入れたキャンパスライフづくりをしており、学生が使いたくなる仕掛けを持っている。学生の中でのLine人気も一つで、何故学校Lineはないの? という声もよく聞かれる。これからは「スマホネイティブ学生」の時代となる。大学側は積極的に現在の社会環境と教育の接点について考察していく必要があると思う。

 

研究員
花岡隆一