主体的学び研究所

取材

烏の縁 広島県立祇園北高校への訪問

広島の県立祇園北高校に訪問させていただきました。
事務長のNさんに、たいへん興味深いお話をいただきました。
とても印象深かったので、ご紹介します。

「研究所は、新橋駅の烏森口に近い場所にあります。
烏森という名の由来は、海に近く小高い木に烏が集まり、
たくさん巣をかけていた、とか、神鳥の集まる場所ということらしいです。
一方、広島にも神話の中で、神様の化身である八咫烏(やたがらす)が有名で、
研究所とは「烏の縁」だったのですよ。」

それまで、烏がそんなつながりがあるとは思ってもみなかったです。
事務長Nさんには、そのようにお調べいただいていて、たいへんうれしかったです。

追記です。
懇親会で一番人気のお酒(雁木という山口のお酒)がありました。
同高のとても愉快なT先生が教えてくださったお酒で、
いつの間にか「我も我も……」と広がり、みなさん、本当においしくいただいていました。

ところでその「雁木(がんぎ)」というのは、階段状の船着き場のことで、名所の鞆の浦にあります。
なんと、さきほどの八咫烏に化身した神様のまつられた小烏神社は、鞆の浦の近くだそうです。
あとでそれを知って驚きました。

実は、新年に、私は駅前の烏森神社でお参りをしました。
新年からずっと、神様にあたたかく見守っていただいているような気持ちです。
素晴らしいご縁に感謝しながら、活動を続けたいです!
祇園北高校の皆さま、ありがとうございました!!

研究員 大村

学ぶことへの招待――社会へつながる学びとは(2)

卒後の進路を考える際に、
学生が自分と社会のつながりをどのように見ているか、説明できる人はどれだけいるだろうか。
何を手立てに社会の中の自分を見ているか想像がつくだろうか。

学生はいざ社会に立つときに、
自分自身が社会とどう関わっているか、
自分が社会(や就職先の企業)で何が出来るのかを考えたり、
何をして貢献できるのか、
どうやって自分と社会との相関関係を考えたらよいか分からない。
そして、その術をほとんど身に付けていない、
と(株)ワークスアプリケーションズの佐藤文亮さんは指摘する。

もっと調べていくと、企業選びの際に、大学入試時の偏差値をあてはめる傾向まで見えると言う。
首尾よく入社したとしても、すぐさま入社前に思ったことの「ズレ」や「行き止まり感」を味わうことになろう。

佐藤さんは企業における人材育成・人材開発の経験を通して、
学生が自分自身と向き合い、社会に歩みだすためには、“社会と自分”という観点が必須であることをつきとめ、
その観点を磨く“パトロゴ”というプログラムを開発した。
そのプログラムを通して、人と歴史、自分と社会、という関係を問い、深く学ぶ機会の提供を
複数の大学で実践している。
なかでも、名古屋大学、立教大学では、単位認定の正課科目授業だ。

これは(1)に前述した鹿児島大学の全学必修の地域志向科目と重なるところがある。
複雑で常に変化する未来社会では、今よりさらに「自分自身と社会(周囲)との関係」を問われることになる。
両者ともに、多様なシチュエーション(学校だけに拘らない環境)でも自ら問い、考える行為を促す取り組み事例である。

(つづく)
研究員 大村昌代

学ぶことへの招待――社会へつながる学びとは(1)

鹿児島大学が今年度から新たに開講した全学必修の地域志向科目「大学と地域」のリーフレットがとても興味深い。
教科やコース、テーマの説明が記載されているが、スタイルが違う。
そのテーマは「問いかけ」から始まるのだ。

例えば、環境・島嶼(とうしょ)というテーマでは、
「環境問題という言葉はよく耳にしますが、その具体的な中身は何で、自分にどう関係していますか?」
「私たちは何が出来るでしょうか」
と問うている。

言い換えてみると、
「あなたはそのテーマとどんな関係ですか?」
「あなたは何をしようと考えますか?」
「自分の身に起こることだけではなく、それを地域課題として考えませんか?」
と、「学習者が考える」というスタイルだ。

そして、「大学と地域の関係」を学生が部外者で遠目でみつめるのではなく、
「自分自身と諸課題」「自分自身と社会との関係」を考える機会ですよ、
と問いかけによって学びへと招待しているのだ。
これは学習者中心のシラバスとも共通するポイントではないだろうか。

学習する内容も工夫されていて、COC活動での研究成果や地域課題解決への取組みに深くつながっている。
学校の枠から社会や生涯の学びへとつながる発問が、広く展開されている事例である。

「大学と地域」リーフレット
大学と地域パンフ

(つづく)
研究員 大村昌代

「偉大な教師はインスパイアする」※

東京インターハイスクール[東京都渋谷区](http://www.inter-highschool.ne.jp/)では、卒業式と入学式を同時に行う、とてもユニークなセレモニーを開催している。「同時開催? なぜ? どんなことをするのだろう。」多くの方がそう思うのではないだろうか。

時期的には、新たな進路に踏み出してしばらくしてからの式となる。自分の学びたいこと、追究したいことを前提にカリキュラムを作り、将来像を描きながら勉強し、プロジェクトをやり遂げて卒業を迎える。修業年限はない。その過程が自分のしたいことだから楽なのかというと、そうではなかったと多くの卒業生が振り返っていた。

では、やる気、継続力、原動力はどこにあるか。「ただ単に教科を勉強するのではなく、自分にとってなぜその教科を勉強するのか。意味ある学びができるからこの学校に入った。」「やろうと決めた。たいへんとも思ったが、やってみるとできた。」「いままでの自分を振り返り、好きなことだけするということでなく、「自分に責任を持てるか」と自問することで達成できた。」卒業生のことばは、主体的な学びとはなにかについて、大いに示唆するものだ。

「偉大な教師とは、、、」と引用した講話をたびたび拝聴したが、(私の経験上で)今回ほどピッタリだと思ったのは、この入卒式の生徒さんたちが初めてだった。壁を乗り越えて進路を切り開いた卒業生を見つめる入学生と入学したての後輩を見守る卒業生(と在校生)は、お互いをインスパイアする素晴らしい人たちだった。

※William Arthur Wardの格言
The mediocre teacher tells.
The good teacher explains.
The superior teacher demonstrates.
The great teacher inspires.

研究員 大村昌代

ニューヨークロースクールのIT(授業収録)の先端的教室設計への挑戦

岩手大学(大学教育総合センター)の江本先生は、大学の教員•職員•学生のための教授技術学習システム『匠の技』の開発で著名です。

https://takumi.iwate-u.ac.jp/

 

9月にニューヨークの*NYLS(New York Law School)を訪問され、アクティブラーニングのためのITを活用した教室デザインの在り方を調査されました。

研究所で、江本先生からヒアリングをしたので概要を報告します。(花岡)

 

2012年PODでは「Pencils or Pixels」をテーマに授業へのIT導入で沢山の発表がありましたが、NYLSはその代表事例といってもよく、授業収録システムの第3世代を実現しています。第1世代は模擬裁判の授業を想定した大教室、第2世代は模擬面接(弁護士とクライアント等)想定の小教室、第3世代は、グループ討議のための中教室。教室のデザイン会社が、それぞれの目的に沿ったITの設計をしている。複数のカメラや天井マイクを教師や学生の授業での動線などを想定した設計になっている。(日本では、システム会社が授業の在り方を前提としたIT設計をしていることはまだ少ない)

NYLSでは、こうした設計の結果、学生のトレイニングの成果が確実に伸びているとのこと。

江本先生は、日本の授業収録等の教室設計も、今後は授業の在り方を前提として設計をする時代になってくると述べられています。

 

*  New York Law School

1891年に設立され、ニューヨークの法律学校は、法律、政府、金融街の中心近くにマンハッタン南端に位置する独立した法律学校です。。ニューヨーク·ロースクールでは、13,000人以上の卒業生を持ち、現在アメリカのビジネス、法律、金融、法律、不動産、税務、その5つの高度な学位プログラムのいくつかの1365のフルタイムの学生とそのJDプログラムと95の生徒で400パートタイムの学生が在籍しています。