主体的学び研究所

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クリーブランド管弦楽団とベートーヴェン、ICEモデル

フランツ・ウェルザー=メストが音楽監督をしているクリーブランド管弦楽団によるベートーヴェン交響曲と序曲の「プロメテウスプロジェクト」と銘打ったシリースが行われた。ベートーヴェンが熟知していたプロメテウスをメタファーとして、ベートーヴェンの交響曲や序曲を考えるという挑戦である。コリオランと8番、5番を聴いた。これだけで何かを言うことは難しいが、クリーブランドのベートーヴェンは気持ちを豊かにしてくれたことは間違いない。フランツ・ウェルザー=メストはベートーヴェンは、自身の政治的、哲学的な信念を音楽を通じて表明したものと考える。それは正義、自由、個人の価値などを思い起こすものであった。ICEで考えるとベートーヴェンが求めた究極の問い(Extensions)である。「人はどう生きるのか」逆境の中でも人は常に最善の行動を追求する。そうでなくてはならないと考え、ベートーヴェンはもっている才能の音楽によってそれを伝えたいと考えた。1番から9番がどうConnectionsしているのかは専門家に任せたい。ウェルザー=メストは「プロメテウスプロジェクト」でベートーヴェンの音楽について問いている。とても興味深いコンサートであった。

 

研究員
花岡隆一

ネィティブに違和感のない英語習得方法-米BYU渡部先生へのインタビュー

BYU渡部正和先生が開発した”Three Steps Way”というネィティブに違和感のない英語習得法に関しては本ブログでも何度か取り上げている。この度、渡部先生をお招きして、顧問のゲーリー先生にその中身について詳しくインタビューをして頂いた。

日本人が英語習得に壁があるのは国民性(奥ゆかしい、思慮深いことが美徳)にあるというステレオタイプの理由でなく、文字文化中心・能力主義認定制度が言語の秀でた人の言語習得能力を活かすようになっていないという指摘が新鮮です。さらに、英語習得は、「ことばの意味」「文法」の学びに偏っていて一番大切な要素である「文脈」での理解を英語教育では全くと言っていいほど無視してきた。この「文脈」で考えるということが”Three Steps Way”の本質である。

米国渡航一世の英語はとても優れていたという証拠がアムハースト大学のアーカイビングに保存されている。日本人は決して英語習得が不得手な国民ではないのである。英語脳ができないような教育をしていることに原因がある。英語を英語として理解しなければ、ネィティブにはいつまでも違和感が残る英語しか使うことはできない。いくら早く英語教育を始めてもパラダイムシフトをしなければ結果は変わらない。

渡部先生は日本で「みくに国際学園」という学校を設立して、BYU方式の英語習得法の普及に励んでいる。生徒の中心は海外での教育を目指す高校生であり、受験英語の学びでないにもかかわらず英語検定等の成績は極めて高い。

 

 

研究員
花岡隆一

「チームワーク」に関する学び

帝京大学で面白いセミナーを開催した。「チームワーク」に関する授業参観とセミナーをセットにしたものである。ひとつは、讀賣新聞の松本美奈氏による「(相手、対象に)なりきって(コミュニケートする)」という教養課程の授業である。松本美奈先生の授業はジャーナリストであるだけに、学びに「時間」の使い方を導入する。大体1~3分で区切り学生に活動させる。緊張感と集中力は自然と高まる。記事をコンセプトマップに描く予習を経て、チームワーク学習では話し手と聞き手の立場になりきってコミュニケーション力を磨く学習である。これができるようになるまでにはいくつもの要素をクリアーしていかなければならない。学生の成長が楽しみな授業である。

広島祇園北高校の柞磨(たるま)昭孝先生は、「学習」には他者性 (otherness)が存在すると言う。”No man is an Island entire of itself;”というJhon Danneの有名な詩があります。他者、社会に貢献しているという意識が学びになければモチベーションは継続しないということでもあります。

もうひとつはカナダのクィーンズ大学のAndy博士による「チームワークの進め方と評価について」と題したセミナー&ワークショップです。彼が仲間と開発した「チームQ」というツールを活用しながらチームワークの評価について考えました。企業や社会での仕事のやり方に関してチームワークは必須のこととして実践されているが、大学ではチームワークの理論的・実践的学びということはあまりやっていない。改めて大学の学びとしてチームワークを考えるということがAndy博士の狙いである。またチームワークはアクティブラーニングを促進するために必須の活動でもあります。「チームQ」も学生が中心になって作り上げたものです。素晴らしい!

 

研究員

花岡隆一

 

「質的データ分析ワークショプ」からの学び

看護教育者の育成に注力される星直子先生からご案内頂き、水野節夫先生の質的データ分析ワークショップに参加した。

「質的データ分析」というと、グラウンデッド・セオリー(Grounded Theory)を思い起こす人が多いと思う。看護学において定着している。水野節夫先生は第一人者であり、CM法(事例媒介的アプローチ︙Case Mediated)を開発されている。

データ分析には多様な手法があるが、水野先生の言う本質的なこととは、データに直面したときの態度である。つまり分析者の意志や意図の前に「データにきちんと向き合っているかどうか」ということである。

CM法の戦略として3つ紹介頂いた。<アイデアの風船飛ばし><なぞり><簡易整理法>である。素材に直面して、この戦略に沿って考えていくと基本的な流れができあがる。とても有効な戦略である。

 

 

花岡隆一
研究員

米国医学教育のアクティブラーニング

米国東海岸名門大学の医学教育を視察して、アクティブラーニングへの取組みに関する日本の医学教育との違いを考えてきた。訪問先は、Harvard Chan School (大学院)& Harvard Medical School、NYU Dentistry & NYU Nursing、University of Pennsylvania(Penn Medical)の5個所である。

米国の医学教育で特徴的なことは次の通りである。

第一に、教育・臨床・研究三位一体の「医学教育プラットホーム」の統合化を徹底的に促進している。データの共有化・活用を積極的に行っている。

第二に、医学部の授業形態は、TBL、テュートリアル、カンフェランス、シュミレーション、レクチャー等多様であるが、アクティブラーニングはどんな授業にも必須のこととして推進されている。

第三に、Student Engagementは米国の殆どの大学で重要な戦略となっているため、学習環境の整備は徹底している。即ち、アクティブラーニングクラスルームがない大学は考えられないという。

詳しくは別途視察レポートを書くつもりである。

 

花岡隆一
研究員