主体的学び研究所

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年末年始のお知らせ 今年もありがとうございました(2022年12月23日)

皆さま

今年も残すところあと一週間ほどとなりました。
師走の日々、いかがお過ごしでしょうか。

弊所は、2022年12月28日~2023年1月4日を年末年始の休業をいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。

弊研究所も様々な変化のなかで、活動を続けております。
発見とチャレンジの連続で、とても新鮮な毎日になっています。
特に、先生方や学生の皆さん、企業の方々と意見交換したり、議論させていただいたことは
とても大切で何事にもかえられない時間です。
そのなかで未来に続く力を得て、私たちの研究もさらに促進されています。
来年もさらに主体的学びに関する研究を続けてまいります。

今後ともよろしくお願い申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎えください。

仕事とは人の存在する目的とどう関わってくるのか?

発端はソーシャルビジネスを20年間続けてきた町野弘明さん(SBN代表理事)の話を聞いたことです。政府だけに社会問題の解決を任せられないという思いから、地域主義を標榜して、エコロジー中心の社会への変革を目指している。クマールの「スモール・スクール」や「シューマッハ・カレッジ」の設立はデューイの考えにも依る。ヴェブレン、宇沢弘文、玉野井芳郎、のソーシャル・キャピタルやエントロピーを考えたエコロジカルエコノミーを押しすすめ、GDPを中心に置いた経済からの離脱を考えないとならないという考えに至る。物理世界ー理性と非物理世界ー倫理のバランスをどう保つか。世界的なSDGsやグリーンピースという活動に依存することの怖さを警鐘する。

人が人らしく生きることの原点は仕事であり、「より大きく、より早く、より豊かに」仕事を進めるという世間で言われていることは、実際は仕事を歪めてしまう。人間の頭脳を毀損させてしまう。デカルト以降の真理であったことが今や神話になりつつある。労働者をして仕事の要請に適応させることではなく、仕事を労働者の必要に応じて適応させることが必要である。しかし、今の社会では誰かが嫌な仕事を引き受けらされる構造になっている。仕事が人の存在する目的とどう関わっているかが考えられない。スモールイズビューティフルの著者の考えは「自己中心主義から脱却して、他者と協力して、他者へのサービスとして仕事を実践すること」である。必要以上のものを人は求め過ぎている。必要なものは自分で作るという原点に戻る。必要でないもの(消費財)を求めないという生き方は私たちの意識改革が必要であるが、本当に必要なものは僅かに限られている。自分で作るということはart(心がこもった技術)である。artmは芸術だけでない。料理、洗濯、庭仕事など全てartである。「スモール・スクール」「シューマッハ・カレッジ」での学びの原点はartである。




花岡隆一

教育のDXを促すMediasite学習効果の実践研究報告

主体的学び研究所は、2012年文科省「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」のアクティブラーニングの実践、2017年「主体的・対話的深い学び」への促進の中で、さらには高等教育のDXの目的である「学修者中心の学び」の実現のためのICT(主として動画テキスト)の学習効果に関する実践調査研究を続けている。2022年のEdixはニューノーマル時代へのDXの実現に関する大学の取り組みに注目が集まっているが、その中でデジタルを導入した授業における学修者の学びの状況に関しての調査研究の一部をご紹介する。

 

調査研究内容は次のとおりである。

• デジタル化の意味と授業データの解釈

• 学習者は授業にどう臨んでいるのか

• Mediasite学習をどのように使っているか

• Mediasite分析から学習状況を類推できることは何か

• Mediasite学習分析から学習支援とFD(授業設計)支援

• Mediasite EdTech新製品

• 未来への展望

 

デジタル化を進めることの意味はシンプルである。

for more students to access videos   学修者はICTが存在すれば、それぞれの仕方で見事に活用する

for us to record the access log of each student  学修者が使えばデータが残り活用できる

for most students to take an effect using videos   ICT(video)の活用は学習成果と相関関係がある

 

学修者がどのように授業を受けているかも予想している通りの結果であった。

メタ学習者は授業の学び方を承知しており、授業に集中していることからトータルとして効率的な時間の使い方ができているが、時間をかけて予習復習しても留年する生徒は1授業での集中力の欠如 2基礎知識の欠如などが主たる原因と想定される、即ち学び方がわからない。良い成績を得る生徒は授業の重要な話やデータを見返しているが、留年する生徒はフォーカスすべきものがまちまちである。授業評価や学生アンケートとビデオ学習との相関も明らかである。視聴の高い授業は授業評価でも高い。これは明確なエビデンスとなる。図形やグラフの多い授業は時間内での把握が難しいということも授業評価からわかった。授業の復習のタイミンングの分析では1週間以内に見返す学生は、効率良く 時間をかけないで習得しているが、時間を空けて復習する場合は授業まるごとの復習をしている。短時間の予習学修でも授業での集中力=理解力は高まる。復習テストについ ても授業の把握を簡単にできることからvideo学習は効果的であることも実証できた。

主体的学び研究所は、大学教員とも提携して学習効果を上げるためのLA(Learning Analytics) の実践とフィードバックについて、新しいEdTecも開発することができた。学習データは膨大であり、意味あるデータを抽出して解釈することが難しいが、膨大なデータから汎用的な傾向を掴むためのアルゴリズムを開発した。(patent申請)

ニューノーマル時代での学習は対面/リモート環境に対応することが必須であり教育の質が問われるが、ミネルヴァ大学のようにリモートだけで多様な教育を実践し高い評価を得ているところがある。ICTの未来へ向けた開発はまだスタートに過ぎない。Science for SocietyからSociety for Scienceの時代へパラダイム変換している今日、教育の本質にフォーカスしたICTの開発や利活用を考えていきたいと思う。

 

主体的学び研究所 研究員 花岡隆一

オフィス移転のお知らせ(2021年11月22日より)

このたび、メディアサイト株式会社 主体的学び研究所は、
新橋から品川へ移転いたします。

2021年 11 月 22 日(月曜日)より、新オフィスで営業を開始いたします。

今後ともよろしくお願いいたします。

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■移転先住所
〒108-0075
東京都港区港南 2 丁目 12 番地 32 号 SOUTH PORT 品川 8 階

■電話番号 03-6452-9048(従来通り)

【最寄り駅】
●JR「品川」駅 港南口より徒歩 9 分
●京浜急行「北品川」駅より徒歩 11 分
●りんかい線  東京モノレール「天王洲アイル」駅 B 出口より徒歩 15 分

年末年始のお知らせ(2020年12月25日)

皆さま、今年もあと少しとなりましたね。

いかがお過ごしでしょうか。

 

弊研究所の仕事納めは本日25日となりました。

新年は、1月4日からです。

 

どうぞ健康に、安全に良き年をお迎えください。

来る年がわくわくと希望に満ちた年となりますように。

 

主体的学び研究所一同

教育分野におけるクアルコムの活動

サンディエゴのクアルコム本社を訪ねる。サンディエゴは40年ぶりである。天候は少し不順であったが、クアルコム本社と研究所を訪問できたのはとてもラッキーであった。

教育分野で活動しているチームと面談する。現在Wireless Reachのプログラムを45件、27万人を対象に進めている。主には12Kであるが大学もある。その中でKentacky大学との共同プロジェクトとして「STEM Mobile Learning」というキャンパス空間を超えた学生同士の学び合いや教師との学びの仕組みづくりが面白い。Corey E.Bakerという教師が中心になっている。広義のSupplemental Instructionとも言える。

「Thinkabit Lab」は、サンディエゴで1万4千人、その他全米地域で2万2千人が参加してNext Generation of STEM innovatoryというプログラムである。これはSTEM Gapsを埋めていくねらいがある。
さらに「FIRST」というプロジェクトもある。18万人(25カ国)が参加している。Segwayを開発したDean L Kamenがはじめた。2010年にはRobotics RB3 Platformをつくり、Qualcomm Foundationも作った。
このように世界規模での教育実験をしており、GoogleやAppleとは違う教育分野でのクアルコムの取り組みには今後も注目していきたい。
研究員
花岡隆一

年末年始のお知らせ

弊所は2018年12月28日(金)より2019年1月3日(木)まで休業いたします。
1月4日(金)から平常通りとなります。

研究所の活動へのご協力やご支援を賜り、ありがとうございました。皆さまとの交流を通して、一つひとつ学びながら一年を過ごすことができました。皆さまにはこころより感謝申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。
研究員一同

2018.11.17(土) 『主体的学び』に執筆の先生方がイベントに登壇

松本美奈さんからとても魅力的なイベントの情報をいただきました。高大接続、未来の学びに関する研究は、弊研究所もずっと関心を寄せていたトピックです。

  松本美奈さん(読売新聞)、飯塚秀彦先生(群馬県立大間々高校)、倉部史記さん(主体的学び研究所フェロー)の方々が、未来の学び、進路選択を考えるフォーラムに登壇されます。(←ポスターをクリックすると拡大されます)
このフォーラムは、親子でも参加できるそうです。大学、高校、保護者、高校   生、それぞれの立場から未来をみつめるいい機会になりそうですね。

 

 

(※弊研究所は、イベントとは直接関係ございません。)

 

3人の先生方には、弊所刊行の各号でご執筆いただきました。各号での執筆は数年前のものですが、重要な示唆をいただいています。読者の方もこれまでの学びを振返りつつ、未来の学びを考えてみてはいかがでしょうか。

☆★☆『主体的学び』でのご執筆の情報☆★☆

松本美奈さん
「質問力を鍛える―「新聞でハテナソン」のすすめ」『主体的学び 5号 アクティブラーニングを大学から社会へ』

飯塚秀彦先生
「高大接続からみた、キャリア教育、進路指導の問題点」(伊勢崎市立四ツ葉学園中等教育学校/執筆時)
『主体的学び 別冊 高大接続改革』

倉部史記さん
「高大接続改革の今後と課題」『主体的学び 別冊 高大接続改革』
「高大接続の現場より―高大それぞれが抱えている課題」『主体的学び 2号 反転授業がすべてを解決するのか』

学習スペースと主体的学びについて

カナダのMcGill大学への訪問についてはこの欄で書いた。この度、McGill大学他の先生方との交流からLSRS(Learning Space Rating System)の翻訳(ver1.2)を行った大阪大学の浦田悠先生(全学教育推進機構)にお会いして、研究内容をお聞きした。豊中キャンパスの理工系学部の奥に全学教育推進機構の建物がある。浦田先生の専門は心理学である。Educauseでの交流などからLSRSに出会って興味を持たれた。いち早く日本語に翻訳されたのは先見の明がある。現在は一人で研究されている。そもそもLSRSは学生のエンゲージメントを促すための学習環境について、そのソフトとハードの両面から考えるというものであり、経営トップから現場、あらゆるステークホルダーの考え方を一致させることから始まる。McGill大学でもこの理念の一致に至るまで3年間を要した。

浦田先生はLSRSを構成する要素の一つひとつについてその意味付けを分析することから始めている。これは学習への直接的関与を超えて環境と人間の関係という一段高い視点での洞察が必要になるため地道な研究であるが、重要なプロセスであり、これがないと、感性でこういうものはよいはずであるというフォーマットができてしまう。

最近はビジネスでDesign Thinkingという考え方がよく使われているが教育においてもDesgin Thinkingが導入されるようになっている。逆コースデザインや探求学修などが例。学習スペースの問題は、本来のデザインが活用されるところであり、もっと研究される必要を感じている。浦田先生の研究成果が楽しみである。

 

研究員

花岡隆一

BYUで開発したE塾はディープラーニングで英語脳を鍛える

米国BYU渡部正和博士が開発したE塾に参加している。エレノア・ジョーデン先生(言語学)から学んだ言語習得法を基にして日本人向けに開発したものである。真正な英語習得法である。

第一に学習者中心の学びである。自分の能力を引き出す学びであり、自分で学んでいける能力をつけることにある。英語の3要素はモチベーション、正確さ、流暢さであるがこの3つは関係性があって、そのバランスを維持しながら成長しなければ上達しない。E塾の最終目標はネイティブに違和感のない英語である。教師は生徒の能力を引き出すために辛抱強く待つ。決して正解を言わない。(つまり正解はない)

第二にクリティカルシンキング、デープラーニング、クリエイティブラーニングの授業である。授業は終始質疑応答で進む。教師の質問が授業をつくる。さらには生徒の質問が授業を展開させる。教材が多様である。小説、評論、社説、TED Talk、政治スピーチ、映画、音楽、経済学、社会学、哲学、科学など社会に通じる分野でテーマを持つ授業である。対象のテーマに関して生徒のinsight(洞察)を執拗に求める。頭が疲れるぐらい。「あー、わかった、わかった、成る程そうか」「いや、なにかまだ疑問だ、もう少し考えよう」ということの繰り返しである。

第三に文脈で学ぶことの重要性である。単語や文法を意識しては英語は上達しない。単語や文章の一つひとつに意識があるとネイティブのスピードに追いつかないためにネイティブに違和感を与えてしまう。forward looking wayと言い、相手の話や文章の先を予測していくことができるようにならないとスピードは追いつかない。これは英語脳をつくるという作業でもある。

第四にユーモアやアレゴリーなど日本人に弱い思考が鍛えられる。即興で瞬時に自分の考えが表現できることは欧米文化には必須のことで日本人は慣れていない。比喩、類推、仮定、比較、ユーモアなどの表現も文脈で覚えていく。

第五にシーンに応じて話すこと(すなわち聴くこと)の戦略を覚える。例えば、議論というシーンではpostulation, hypothesize, extrapolate, speculationを覚える必要がある。

渡部博士のE塾は、「英語習得のパラダイムシフト」である。今までの英語を覚えるという学びでは考えたことのない枠外へ出て問題解決を図る挑戦である。コペルニクスの天動説である。渡部博士は言う。「明治時代の日本人英語1世はアムハースト大学にその事実があるのだが英語のうまい民族であった」にもかかわらず何故今英語が下手な民族と言われるのかを考えてみた。いつの間にか、日本人の、日本人による、日本人のための英語になっていたことに思い至る。(続く)

 

研究員
花岡隆一