主体的学び研究所

ブログ

ブログ一覧

教育分野におけるクアルコムの活動

サンディエゴのクアルコム本社を訪ねる。サンディエゴは40年ぶりである。天候は少し不順であったが、クアルコム本社と研究所を訪問できたのはとてもラッキーであった。

教育分野で活動しているチームと面談する。現在Wireless Reachのプログラムを45件、27万人を対象に進めている。主には12Kであるが大学もある。その中でKentacky大学との共同プロジェクトとして「STEM Mobile Learning」というキャンパス空間を超えた学生同士の学び合いや教師との学びの仕組みづくりが面白い。Corey E.Bakerという教師が中心になっている。広義のSupplemental Instructionとも言える。

「Thinkabit Lab」は、サンディエゴで1万4千人、その他全米地域で2万2千人が参加してNext Generation of STEM innovatoryというプログラムである。これはSTEM Gapsを埋めていくねらいがある。
さらに「FIRST」というプロジェクトもある。18万人(25カ国)が参加している。Segwayを開発したDean L Kamenがはじめた。2010年にはRobotics RB3 Platformをつくり、Qualcomm Foundationも作った。
このように世界規模での教育実験をしており、GoogleやAppleとは違う教育分野でのクアルコムの取り組みには今後も注目していきたい。
研究員
花岡隆一

年末年始のお知らせ

弊所は2018年12月28日(金)より2019年1月3日(木)まで休業いたします。
1月4日(金)から平常通りとなります。

研究所の活動へのご協力やご支援を賜り、ありがとうございました。皆さまとの交流を通して、一つひとつ学びながら一年を過ごすことができました。皆さまにはこころより感謝申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。
研究員一同

2018.11.17(土) 『主体的学び』に執筆の先生方がイベントに登壇

松本美奈さんからとても魅力的なイベントの情報をいただきました。高大接続、未来の学びに関する研究は、弊研究所もずっと関心を寄せていたトピックです。

  松本美奈さん(読売新聞)、飯塚秀彦先生(群馬県立大間々高校)、倉部史記さん(主体的学び研究所フェロー)の方々が、未来の学び、進路選択を考えるフォーラムに登壇されます。(←ポスターをクリックすると拡大されます)
このフォーラムは、親子でも参加できるそうです。大学、高校、保護者、高校   生、それぞれの立場から未来をみつめるいい機会になりそうですね。

 

 

(※弊研究所は、イベントとは直接関係ございません。)

 

3人の先生方には、弊所刊行の各号でご執筆いただきました。各号での執筆は数年前のものですが、重要な示唆をいただいています。読者の方もこれまでの学びを振返りつつ、未来の学びを考えてみてはいかがでしょうか。

☆★☆『主体的学び』でのご執筆の情報☆★☆

松本美奈さん
「質問力を鍛える―「新聞でハテナソン」のすすめ」『主体的学び 5号 アクティブラーニングを大学から社会へ』

飯塚秀彦先生
「高大接続からみた、キャリア教育、進路指導の問題点」(伊勢崎市立四ツ葉学園中等教育学校/執筆時)
『主体的学び 別冊 高大接続改革』

倉部史記さん
「高大接続改革の今後と課題」『主体的学び 別冊 高大接続改革』
「高大接続の現場より―高大それぞれが抱えている課題」『主体的学び 2号 反転授業がすべてを解決するのか』

学習スペースと主体的学びについて

カナダのMcGill大学への訪問についてはこの欄で書いた。この度、McGill大学他の先生方との交流からLSRS(Learning Space Rating System)の翻訳(ver1.2)を行った大阪大学の浦田悠先生(全学教育推進機構)にお会いして、研究内容をお聞きした。豊中キャンパスの理工系学部の奥に全学教育推進機構の建物がある。浦田先生の専門は心理学である。Educauseでの交流などからLSRSに出会って興味を持たれた。いち早く日本語に翻訳されたのは先見の明がある。現在は一人で研究されている。そもそもLSRSは学生のエンゲージメントを促すための学習環境について、そのソフトとハードの両面から考えるというものであり、経営トップから現場、あらゆるステークホルダーの考え方を一致させることから始まる。McGill大学でもこの理念の一致に至るまで3年間を要した。

浦田先生はLSRSを構成する要素の一つひとつについてその意味付けを分析することから始めている。これは学習への直接的関与を超えて環境と人間の関係という一段高い視点での洞察が必要になるため地道な研究であるが、重要なプロセスであり、これがないと、感性でこういうものはよいはずであるというフォーマットができてしまう。

最近はビジネスでDesign Thinkingという考え方がよく使われているが教育においてもDesgin Thinkingが導入されるようになっている。逆コースデザインや探求学修などが例。学習スペースの問題は、本来のデザインが活用されるところであり、もっと研究される必要を感じている。浦田先生の研究成果が楽しみである。

 

研究員

花岡隆一

BYUで開発したE塾はディープラーニングで英語脳を鍛える

米国BYU渡部正和博士が開発したE塾に参加している。エレノア・ジョーデン先生(言語学)から学んだ言語習得法を基にして日本人向けに開発したものである。真正な英語習得法である。

第一に学習者中心の学びである。自分の能力を引き出す学びであり、自分で学んでいける能力をつけることにある。英語の3要素はモチベーション、正確さ、流暢さであるがこの3つは関係性があって、そのバランスを維持しながら成長しなければ上達しない。E塾の最終目標はネイティブに違和感のない英語である。教師は生徒の能力を引き出すために辛抱強く待つ。決して正解を言わない。(つまり正解はない)

第二にクリティカルシンキング、デープラーニング、クリエイティブラーニングの授業である。授業は終始質疑応答で進む。教師の質問が授業をつくる。さらには生徒の質問が授業を展開させる。教材が多様である。小説、評論、社説、TED Talk、政治スピーチ、映画、音楽、経済学、社会学、哲学、科学など社会に通じる分野でテーマを持つ授業である。対象のテーマに関して生徒のinsight(洞察)を執拗に求める。頭が疲れるぐらい。「あー、わかった、わかった、成る程そうか」「いや、なにかまだ疑問だ、もう少し考えよう」ということの繰り返しである。

第三に文脈で学ぶことの重要性である。単語や文法を意識しては英語は上達しない。単語や文章の一つひとつに意識があるとネイティブのスピードに追いつかないためにネイティブに違和感を与えてしまう。forward looking wayと言い、相手の話や文章の先を予測していくことができるようにならないとスピードは追いつかない。これは英語脳をつくるという作業でもある。

第四にユーモアやアレゴリーなど日本人に弱い思考が鍛えられる。即興で瞬時に自分の考えが表現できることは欧米文化には必須のことで日本人は慣れていない。比喩、類推、仮定、比較、ユーモアなどの表現も文脈で覚えていく。

第五にシーンに応じて話すこと(すなわち聴くこと)の戦略を覚える。例えば、議論というシーンではpostulation, hypothesize, extrapolate, speculationを覚える必要がある。

渡部博士のE塾は、「英語習得のパラダイムシフト」である。今までの英語を覚えるという学びでは考えたことのない枠外へ出て問題解決を図る挑戦である。コペルニクスの天動説である。渡部博士は言う。「明治時代の日本人英語1世はアムハースト大学にその事実があるのだが英語のうまい民族であった」にもかかわらず何故今英語が下手な民族と言われるのかを考えてみた。いつの間にか、日本人の、日本人による、日本人のための英語になっていたことに思い至る。(続く)

 

研究員
花岡隆一