主体的学び研究所

MOOCの拡大:教育の変容を促す大きな流れ -日本学術会議シンポジウム-

MOOCの拡大:教育の変容を促す大きな流れ -日本学術会議シンポジウム-

日本学術会議情報学委員会のシンポジウムに出席したのでそのトピックスを報告する。文科省研究振興局下間参事官のプレゼンに続いてのパネル討論は面白かった。「MOOCによる教育改革とそれを支える学術情報基盤の高度化」というテーマで5名のパネリストが登場した。それぞれのパネリストの中で注目する内容が提示されたので概要を記述する。

美濃導彦先生(京都大学)はedxへの参加で、突然MOOCをやるといっても、誰が/どのように/どうやるのか/評価方法は/学生への質問回答の方法はなど現場立ち上げの視点からとても大変であることを披露された。例えば、誰がという視点だけでも授業デザイン、授業評価デザイン、コンテンツ企画等のインストラクチャーデザイン、メディアデザイン、ICT技術者など多くの機能別スタッフが必要であり、日本の大学では壁が高いという指摘であった。

船守美穂先生(東京大学)は、MOOCの誕生は米国で高等教育財政の逼迫に原因があり、州政府等が支援してきているが、その効果(単位取得者が少ないなど)で失望感が出ていると。その結果、OERとしての学びの楽しみとしての評価とオンライン教育そのものの広がりという方向で新たな展開が見える。その流れの中で、アダプティブ型学習とパーソナライズド学習の融和が起きてきたという指摘が面白い。さらに、MOOCが日本で騒がれるが、米国ではcMOOC(コネクティビティ)がずっと前からあって、教師もオンラインなどを様々な授業形態のひとつとして取り入れていた環境に慣れている中でのMOOCであることを理解しないと日本の大学で突然同じことをやっても難しいのではないか。対応できる教師も少ない。支援スタッフの大学における有機的連携が前提の米国と日本では文化が違い過ぎる等社会的問題もある。この二人の指摘はこれまでの単純なMOOC期待論や課題論とは別の視点であり、とても重要であると感じた。

喜連川優先生(国情研)がCINET5の早期実現、Education of ICT(ICTリテラシーそもそもの向上)を強調していたのが印象的であった。

 

研究員 花岡隆一

 

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