主体的学び研究所

芸術家を育てる教育について

芸術家を育てる教育について

国立音楽大学の中西千春先生より興味深い研究についてご報告頂いた。「12名の音楽教師にBloom taxonomyを活用した授業設計」で学んでもらう実証である。音楽のような芸術に思想的、構造的な教育工学は不要、否感性教育の障害になる可能性もある、ということが言われている。従ってこうした取り組みは殆ど行われていないようである。

もうひとつの研究は、ドイツの教育学者のRittelemeyer(ゲティンゲン大学)で、心臓移植をしたマウスにオペラを聴かせる実験をした結果、生存が長引きした。芸術と知的活動が部分的ではあるが同一の脳神経領域で処理されることが、脳科学研究でわかりました。音楽を聴くことは言語能力や数学的能力をの発達を促すことが実証された。(演劇やダンスなどもそれぞれ転移効果がある)(「芸術体験の転移効果」(Christian Rittlemeyer 遠藤孝夫訳)

海外オペラの日本公演プロデュースで活躍中の児玉晶子さん(現、東急Orbシアター)に一流の音楽家の教育についてお聞きした。同氏のコメントである。
「経験で感じるのは、芸術家として一流レベルの人達は、あらゆる方面のことを彼らの思考のため(=自分の糧にして、芸術に昇華するため)に知りたがる、刺激を受けたがる、といっても過言ではないです。まさに、そういう本能が普通の人より超貪欲なのがアーティストな気がします。真っ白なキャンバスに、イチから描く絵画をやる画家に比べると、確かに音楽家は再現芸術で、なぞればよい楽譜があるので、哲学マストではなくとも、とりあえず音は出せるかもしれませんが、本当に人に感動を与える演奏をするには、思考して、そのアーテイスト自身の何かを昇華させない限りは、ロボットの自動演奏の方が完璧な日が来てしまうと思います。」

五嶋節著「天才の育て方(講談社現代新書)」

千住文子著「千住家の教育白書(新潮文庫)」

「ピアニストは語る」(ヴァレリー・アファナシエフ著 講談社現代新書)でも数学への愛がピアノ演奏に影響していると言います。ロシアピアニズムという音楽教育システムがあるが、それが一流音楽家を生み出すのではないと。またミハエル・バフチンは、芸術性の本質とは、その構造分析が必要であり、たとえば散文芸術を構成する要素を分析している。

 

(感想)
日本では芸術の社会性について深く考えられていないように思う。中西千春先生の研究は幅白い視点でさらに深められる必要を感じた。リッテルマイヤーの研究の、教育における感性教育はますます重要になるのではないか。AIによりロボットにモラールがいれられるかという問題に沿っても。

 

主体的学び研究所
花岡隆一

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