主体的学び研究所

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現場の知見を、多くの教育者・研究者に共有する研究所を目指して

はじめまして、当研究所のフェローを務める倉部です。
普段、私が向き合っている課題の多くは、以下の2つの分野にあたります。

・大学における教育改善の取り組み
・大学と高校生を繋ぐ取り組み(高大接続、大学広報)

これまで企業、大学、予備校、NPOなど様々な組織で働いてきました。その意味では学術研究の世界というよりも、問題解決のために実践を繰り返し、その中でリサーチの成果を積み上げてきた、という方が、実感に近いかも知れません。
当研究所でも、様々な課題に向き合っておられる研究者や教育者、現場の担当者の方々と一緒に、リサーチと実践を行っていきたいと思います。
また今後はこの研究所の取り組みについて、このブログでも少しずつご紹介してまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。

ところでいま、「主体的に学ぶ」ことの大切さを否定される方は、多くはないでしょう。
受動的な勉強から、能動的な学習へ。静的なインプットを繰り返すスタイルの学びから、アウトプットしながら能力を身に付ける学びへ。教育関係者の間でも、あるいはもっと広範な方々からも、こうした「学びのシフト」に対する期待の声は聞かれています。

社会の変化に伴い、学びのあり方も変えていくべきだという意見は、以前より頻繁に耳にするようになりました。その中でキーワードの一つになっているのが「主体性」や「主体的」といった言葉です。背景には、受動的な学習ばかりを中心に据えてきたこれまでの教育に対する反省もあるのでしょう。今後の社会に求められる人材像を考えた結果、主体的という言葉にたどり着いた人もいるでしょう。
(当研究所の顧問でもある土持ゲーリー法一・帝京大学教授が、「主体的学びとは何か」という文章を書かれているので、そちらもよろしければご覧ください)

そんな中、各地の教育現場では様々なアイディアが実践に移されています。例えば大学では近年、アクティブ・ラーニングと呼ばれる教育スタイルが注目されています。地域の企業や自治体、NPOなどと関わりながら、学生が自分達で様々な課題解決に挑戦し、その過程で様々なことを学ぶプロジェクト・ベースド・ラーニングなど、従来の講義スタイルの授業とは異なる実践も今では珍しくありません。
既に実験的な試みが各地で始まり、その中からは素晴らしい成果も生まれています。日本における「主体的学び」は、着実に広がり始めているようです。

そうした個人ベース、あるいは特定組織内での取り組みの中には、外部の教育者にとっても有用な知見が含まれているはずです。それらには学術研究の成果として発表されているものもあるでしょうが、中には世に知られていないものも多いでしょう。そんな知見を収集し、広く社会に共有するのも、この主体的学び研究所の活動の一つなのです。

「主体的学び」に、決まったスタイルや方法はありません。こうでなければ主体的学びとは言えない、と厳密に定義することは困難ですし、あまり意味も無いでしょう。でも「主体的な学び」を目指して様々な場所で実践されている個別の取り組みの中から、一定の効果を上げたやり方や、共通する要素を抽出することができれば、それは多くの教育現場で役に立つはずです。当研究所が行う研究は、そのように現場の取り組みに有用なものであることを目指しています。

多くの方々と協働し、日本における主体的学びの拡がりを加速させる、そんな研究所になれればと思っております。

新島襄、私立大学の創立に命をかけた男!

東京に唯ひとつの帝国大学という状況の中で、新島襄が描いた「リベラリズム」「地方」「個性」を重視した私立大学の創立の活動に感激する。西欧と日本の文化の差は教育にある。仏蘭西は鎌倉幕府のころにパリに大学があり、英国は北条のときにオックスフォード大学があり、ドイツは足利のことより大学が作られ既に三十を越える。米国は、大阪落城の六年後に移住した人々が十五年後にはハーバード大学をつくった。日本は徳川三百年の間に新発明はあったであろうか。西洋から技術、知恵、文化、法律、行政など形だけを輸入してまねしていても、日本には何も根付かない。徳育教育がないことで、日本人としての自立ができない。大学は官だけに任せてよいものではない。民間の力でリベラルアーツを学ぶ私立大学を何としても創る。新島襄の言う彼我の溝は相変わらず存在しているように思える。(花岡)

読書感想 「新島襄教育宗教論集」(岩波)

Dr. L. Dee Fink氏(元PODネットワーク会長)と帝京大学冲永佳史学長とのFD対談を視る!

2012年7月に、土持ゲーリー法一先生(帝京大学高等教育開発センター長)が主催した(Dr. L. Dee Fink氏(元PODネットワーク会長)の“Student Engagement”に関する講演を聞いてもっと詳しい話を聞きたいと思っていたところ、この程、同大学冲永佳史学長とのFD対談がアップされ、早速視聴しました。

21世紀の高等教育改革に関する具体的な方向性が詳しく示されていて、大変参考になります。皆さんに是非視聴して頂きたいと思います。

主体的学びをしたくても出来ない日本の現状、カリキュラムの見直しの必要性、アウトカムから授業設計を考える授業方法の工夫などの必要性。同氏が開発したTeam-Based Learning (TBL)について、PBLとの違い等も説明があります。教師が実質的なFDを取組むための大学側の対応も興味がある話です。

冲永氏が「社会に出てもずっと学び続けることを、学ぶことが一番大切です」と言う話が印象的です。(花岡)

https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/~ctl/newsletter/fd_talk.html

「自分たちはどうふるまうのか」学びの原則!

「3.11本当は何が起こったか:巨大津波と福島原発」

—科学の最前線を教材にした曉星国際学園「ヨハネ研究の森のコース」の教育実践−(丸山茂徳 監修、東信堂)

 

本当の科学者が、自ら学ぼうとする子どもたちと一緒に全力で授業を作り上げていく物語である。学ぶことの素晴らしさ、人間が脳を持っていることの意味が知らされる。丸山先生は科学者として全身で子どもたちにエネルギーをぶつける。子どもたちは、全身で質問をする。社会の在り方、科学的な探求のプロセス、知の体系化のプロセス、問題の抽出の方法論、哲学的思考を、中学生、高校生が質問していく。丸山先生はそれに真剣に答えていく。すさまじい授業である。

どうしてこんな教育現場が生まれるのか。出版者の東信堂の下田勝司社長も熱い。木更津にある「ヨハネ研究の森のコース」を訪ねたいと思う。(花岡)