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ICEモデルについての所感

 主体的学び研究所 フェロー
柞磨 昭孝

 ICEモデルの魅力は、「学ぶ者の成長を促すフレームワーク」であること、学ぶ者が基点になっていることにあると思う。しかし、これまでの経験から、資質・能力の育成や伸長に焦点が当たっているものの、学ぶ者が成長実感を感じているかどうかについては、あまり問題にされてこなかったように感じる。本来、学ぶことは成長につながるもので、学ぶにつれてアイデンティティが形成され、自尊感情や自己肯定感が高まるべきものだが、さまざまな調査結果をみると、そうとも言えない状況が多くみられる。

 私は、ICEの各フェーズのうち、Extensionsに重きを置いている。Extensionsは「応用」とされているが、単なる知識・技能の応用ではなく、物事の本質をとらえ、それを自己の体験とリンクさせ、創造性を発揮するフェーズだと捉えている。究極は、それぞれの人が創造的に生きることであり、それが主体的ということでもあり、他者や社会とつながることでもある。Extensionsにおいて学びはパブリックなものに昇華する。そこには人と人との出会いがあり、心が通じ合うシーンの発現が期待できる。Extensionsはリアリティに近いところにあり、人の学びの基盤となるものが存在する。私が「他者性」という言葉で代表して表現している、「異質なもの、拮抗する概念、不条理な」どがある。それは一見生きることを困難にする要素に思えるが、自分の可能性を拓くものとして働く重要なものであり、それが学びを豊かにする。文学が不条理を描いて深みを生み出してきたように、他者性がこのフェーズの学びに深みを与える源となる。

 現在の学校教育には「判断や意思決定」の場面があまり多くなく、それが学びに切実感をもたらさない一因となっている。Extensionsでは、他者とかかわり合うという関係性における価値判断が求められる。それは共感や葛藤の中で行われ、矛盾を乗り越えた意思決定となることが多い。そのプロセスを経て「状況とかかわる力」が育ち、アイデンティティが成長し、人として成熟する。「成長を促すフレームワーク」とは、単に「できなかったことができるようになる」「物事を的確に、早く処理できるようになる」ということを示したものではなく、異質なもの、矛盾や相反する価値観で構成された中で、葛藤に導かれて成長し、真の強さを獲得するものであると捉えている。

 IdeasやConnectionsはExtensionsを規定することはできないが、EはCやIを規定することができる。それが逆算デザインの持つ意義であり、学びに必然性、切実感や豊かさを与える。豊かな学びとは、自分の生き方に反映するような学び、自分の環世界を拡げる学びであり、それがExtensionsでの学びであろう。そこに至って「なぜ、古典を勉強するのですか?」という素朴な問いにも答えることができるようになる。