主体的学び研究所

12月

協調学習がないオンライン学習は学習ではない!

本日は主体的学び研究所にニューヨーク工科大学のCTLでコースデザインの指導をしているOlena Zhandko先生をお招きしてセミナーを開催しました。これは東京大学の船守美穂先生の企画によるものです。。日本の高等教育においても興味深いテーマですので簡単にご紹介します。

米国では教育コストの急増により効率化ということが真剣に考えられていますが、MOOC第3世代はMOOC Movementをキャンパス内で活用することでコストの効率化を図っている、という報告は船守先生の調査にあります。つまりオンライン学習が従来とは違う形で注目されています。厳密に言うとブレンド型学習なのですが、オンライン学習の未来型は協調学習が伴うものであるということです。

このオンライン学習における協調学習の有り様についてニューヨーク工科大学での実践を含めた米国の紹介ですが、一方通行になりがちなオンライン学習を主体的学び、深い学びさらにはアダプティブな学びに繋げていくかはマスタリー•ラーニングに近いものがあります。つまり、きめこまかな教師のフォローアップが必要になります。ちょっとした質問(課題)を与えて考える時間をつくる。オープンソフトを活用して学生同士、学生と教師が教師外でコミュニケーションする場(バーチャル空間)を活発にするという流れです。
特にピアー学習の仕組みを張り巡らせることが大切である。一方で学生も教師も時間の制約があるのでどこまで教室外での協調学習を実践するかはよく考える必要があります。

セミナーの詳しい内容は研究所ホームページにアップされると思いますのでご覧ください。

研究員 花岡隆一

”ICEモデル”のこころについて

ICEモデルの開発者の一人であるSue先生(クィーンズ大学、カナダ)の話をよく聴くと何を大切にしているかがまた見えてきた。

アセスメントが学びを促進する。アセスメントと学びは密接な関係がある。すなわち、アセスメントモデルが学生の学びを作るので、もしアセスメントの目標、方法、選択を間違えると学びも間違える可能性が大きいということが原点にある。Bloomの方法という評価された考え方があるが限界もある。それは学びとは直線的に高いレベルに行くものではなく、繰り返していくものであるから。「学習のレベルの違いを学ぶのではなく、質的変容を経験していくものである」ことに気がつく。

Ideas,Connections,Extensionsというのは、知識をつなげて応用するという一連の繋がりであり、学びのプロセスとしてはより複雑な思考を行うことであるが、これは一方向ではなく回転していくものでもある。学習の段階に応じてICEのどれが大切かが決まる。Eで終わるのでなく、またIに、Cに成長していくのである。(ここがとても大切なポイント)

Sue先生の秀逸さはICEの質的アセスメントに「動詞」を使うことに思い至ったことであるが、考えれば学びとは静的なものではなくダイナミックなものであるから「動詞」という仕掛けを考えたのは理屈にもあっている。この「動詞」について考えるとさらに面白いことが分る。つながり(C)に行きやすい動詞と留まっている動詞があるということがゲーリー先生の分析で分った。私たちもまだ見つかっていない動詞を是非発見したいと思う。

研究員 花岡隆一

ICEへの出会い!

広島県の下﨑邦明教育長にお会いする機会を得た。ICEの開発者であるクィーンズ大学(カナダ)Sue先生に同行した。『広島で学んで良かったと思える日本一の教育県の創造』を実現するための10年計画の「学びの変革」に取り組まれている。21世紀を担う子どもたちが地域でも世界でも社会的市民として生きることができるためのコンピテンシーの育成です。このための「学びの変革」つまり教育のパラダイムを変革していく計画です。知識を覚えるということから学んだ知識を活用し、協働して新たな価値を生み出すことへの転換を推進していきます。

下﨑教育長は、一冊の本に出会いました。それがICEモデルです。(『「主体的学び」につなげる評価と学習方法』(東信堂出版、主体的学び研究所発行)教育長の言葉をお借りすると「広島で推進していく「学びの変革」で考えていたことがこのICEにはとても良く整理されていて、あーこれだ!と思いました」ということです。

ICEの特長はポータブルであり、学習者が中心になって使えることです。広島県で生徒、学生、教師等教育の関係者がICEをさらに発展させていただけることを期待しています。

研究員
花岡隆一