主体的学び研究所

10月

講義収録アーカイビングと教育ビッグデータ (図書館総合展)

今年も図書館総合展が横浜で開催される。KADOKAWA・DOWANGOが注目である。川上量生会長は、「電子図書は紙媒体を凌駕するか?」という命題を立て、「本の存在感」を電子図書がクリヤーするのは時間と仕掛けが必要と言う。その答えが今年の総合展で見れるか? アカデミック分野での話題は何と言っても「アクティブ・ラーニング」である。MOOC3.0で反転授業用の映像教材が多数つくられることになるが、現在は教材制作に高価な費用がかかる。大学単体では賄えないので、協創時代の教材づくりとも言われている。

Academic Lecture  Capture分野では世界トップのMediasiteは、世界58か国、1250大学で、昨年度200万時間の講義をアーカイビングしている。それを視聴した学生は3000万viewという。毎日約10万回ほどの講義アーカイビングが学習されていることになる。この200万時間の講義が年々自動的につくられるということは脅威でもある。

MOOC3.0は学内の授業改革にフォーカスしつつある。MOOC2.0時代のビッグデータに加えて今後は学内のビッグデータも分析されて、次の教育改革の方向であるアダプティブ・ラーニングへの転換への期待もでている。こうした流れの中で、Mediasiteの200万時間というビッグデータは教育のビッグデータ活用への期待も広がる。

 

研究員 花岡隆一

「アカデミック・コーチング」日本発の教育イノベーション

菅原秀幸先生(北海学園大学 国際経営学)にお会いした。爽やかなスタイル、語りは熱い。「アカデミック・コーチング学」を世界に先駆け日本から発信している。

スタンフォード大学客員時代に、資質は同じでも学生の磨き方の違いが彼我の差を生むことを目の当たりにされる。それまでも温めていた研究課題に火がつく。「日本の学生の資質は決して欧米に劣っているわけではない。教育方法のイノベーションが必要。どのように? 学生が主体的になるための教育方法はないか? コーチというロジックをアカデミックな場で体系化できないだろうか?」

それが「アカデミック・コーチング」でした。菅原先生は信頼できる多くの仲間と伴に、20年計画で世界に「アカデミック・コーチング」を普及するために、日々クラスでの実践、評価、リフレクション、体系化を推進しています。研究会やワークショップなども開催しています。

主体的学び研究所も応援していきたいと考えています。

アカデミック・コーチング研究会 HP
http://academicalcoaching.org/

 

 

研究員 花岡隆一

宇沢弘文先生を偲んで

宇沢弘文先生が逝去された。ワルラス、ヒックスから多部門理論までを学んだ。シカゴ大学、スタンフォード大学でも一貫してリベラルでユマニズムを徹した先生は、成田問題、水俣問題など社会的な活動に入られて、所謂近代経済学の考え方を変えた。

宇沢先生は日本の高等教育に関しても厳しい提言をしている。日本の大学には真の意味の自由が存在しない。次代を担う人間が育つ環境ができていない。その理由は、ひとつが非人間的•非文化的な入試制度であり、このため大学の形骸化は進んでいる。もう一つは教授人事の自律性の欠除であると。今日でも態勢は変わっていない。文科省も大学も苦しんでいる。

研究員 花岡隆一